メアリー・アン・マシューズは言った: いつまでこんな暗い部屋にいるつもりかしら。

僕は言った: 切れ掛かった蛍光灯が一本だけ、僕と君を照らしている。この部屋はまるで警察署の取調室のように思えるけれど、光の届き切らない四隅は湿ったような暗闇が積もっていて、その向こうに空間がないなんてことには何も保証がないようにも思える。実際のところ、僕はこの部屋の広さを確認したことはない。何度も、君と話しているというのに。

メアリー・アン・マシューズは言った: そう、それで。

僕は言った: 君は、五十センチメートル四方の薄茶色の木製の机を挟んで、僕の向かいに座っている。仕草は僕を注意深く観察しているようだし、けれど次の瞬間には飽きて投げ出してしまいそうにも見える。表情は暗くてよく見えない。髪が、表情を影へ取り込むように隠している。声もどこからか、遠くから響いているように聞こえる気がする、ことがある。

メアリー・アン・マシューズは言った: 続けて。

僕は言った: 部屋の入口、あるいは出口はどこにあるのかわからない。僕の視界にはない。湿った空気が部屋の中を蠢いているような感覚。空気に溺れている。僕はいつも君のことを真剣に見るけれど、時にそれが恥ずべきことのような気がして目を逸らしてしまう。その瞬間、君が、僕の考えも及ばないような感情や意図から、悪魔のような表情で嘲笑って僕を見ているのかも知れない、そんな気に、錯覚に陥ってしまう。

メアリー・アン・マシューズは言った: それから。

僕は言った: こんな妄想めいたことに囚われている僕のことをおかしいと思うかい。気が触れていると思うかい。でもこれは確かなことなんだ、僕はときどきこうして君へ会いにこの部屋へ来ている。一通り話した後、また元の自分の部屋に戻っているんだ。僕は狂ってなんかいない、君はそこにいるんじゃないか、そうだと言ってくれ。

メアリー・アン・マシューズは言った: 可笑しな人。