メアリー・アン・マシューズは言った: どうして誰にも心を開けないのかしら。

僕は言った: くだらないことだとはわかっているはずなのに、誰もが僕のことを見透かしている、という考え方をやめることができない。どんなに信頼のできるはずの人たちと過ごしていたって、心のどこかにそれが染み付いて離れることがない。それは多分、ごくありふれた山を乗り越えることができなかった自分に、どうにかして合理的な解釈を与えたいとか、その程度のことだと思う。頭では合理的なことを考えているつもりで、けれど僕は、例えば僕に起こるいくつかの不都合なことは、僕に何割かの落ち度があるということを、どうしても全面的に許容することができない。それは、僕が弱いからだ。それを受け入れることで自分を否定することが許容できないからだ。あるいは、誰かが僕を無意識のうちにでも陥れようとしていることを、どうしても信じたくないからだ。不都合は災厄のように、突発的に誰もに訪れうるだけのことだと思い込みたいからだ。

メアリー・アン・マシューズは言った: 何にもならないのに。

僕は言った: くだらないことだとはわかっているはずなのに。できることなら、誰かと判り合ったり分け合ったり、とも思うよ。でもメアリー・アン、できないんだ。またそこに突発的な災厄が訪れないとは限らないのに、どうして門を開けて来客を笑顔でもてなせるだろう?僕のもてなし方が間違っていて彼や彼女を怒らせたり傷つけたりするかも知れないのに、または彼や彼女が僕を陥れようと狙っているかも知れないのに。くだらないことだとはわかっているはずなのに、僕にはそれができない。

メアリー・アン・マシューズは言った: 怖がってるだけのことでしょう。

僕は言った: 君は嘘を吐かない、と言ってくれ。