メアリー・アン・マシューズは言った: 嘘だったのかしらね。

僕は言った: 狼少年といえば有名な童話だけど、君はどう思うかな。彼はあれほど酷い結末を迎えなきゃならなかっただろうか。誰にも見捨てられて当然だろうか。彼がいつまでも嘘を付き続けることは、彼だけの責任だっただろうか。僕には、彼を正してやれる人間がいなかったことの方がよっぽど酷い結末に思える。彼には両親がいなかったのだろうか。彼を諌める師や、嗜める友人はいなかったのだろうか。身の果てを案じてくれる恋人はいなかったのだろうか。

メアリー・アン・マシューズは言った: 嘘だったのかしら。

僕は言った: 思うんだよ、メアリー・アン。抜け抜けと必要悪だのと、狼少年を見過ごした人間が自分を合理化することが、どんなに酷い結末なのかと。